「ボディスキャン瞑想」という瞑想があります。私の「ゆるっと瞑想会」でも行っています。
「ボディスキャン瞑想」は、身体の各部位に順番通りに意識を向けていく、シンプルながら深い瞑想です。心身の浄化作用が大きく、続けることで思考・感情のとらわれが自然にゆるんでくるのが特徴です。
この記事では、ボディスキャン瞑想の基本・やり方・効果・コツ・時間の目安・寝ながら行う方法まで、私自身のゴエンカ氏瞑想合宿の体験談を交えながらお伝えします。
ボディスキャン瞑想とは|ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想
ボディスキャン瞑想とは、身体の各部位に順番に意識を向け、そこに起きている感覚をありのままに観察していく瞑想です。
S.N.ゴエンカ氏が広める
ボディスキャン瞑想は、S.N.ゴエンカ氏(1924〜2013)が世界に広めたヴィパッサナー瞑想です。
ゴエンカ氏は、1955年にミャンマーの在家瞑想指導者であったサヤジ・ウ・バ・キンから、レディ・サヤドー系のヴィパッサナー瞑想を教わります。これがボディスキャン瞑想だったわけですね。
ゴエンカ氏は、その後、10日間の合宿形式で行う瞑想施設を世界各地に作ります。現在、270箇所の施設があります。
『サピエンス全史』でも著名なユヴァル・ノア・ハラリもゴエンカ氏のボディスキャン瞑想を長年、実践しています。今や世界で最もよく知られているヴィパッサナー瞑想となっています。
ボディスキャン瞑想は「あるがまま」に気づく
ボディスキャン瞑想の本質は「観察すること」。感覚を変えようとしない・なくそうとしない・判断しないで、ただ「あるがまま」に気づき続けます。
この実践が、心の深い部分にある緊張・執着・ストレスを自然に解放していきます。後述する通り、原理的には気功になります。ゴエンカ氏の瞑想は、気功瞑想という言い方もできます。
ゆるっと瞑想会では瞑想と気功を教えていますので、ボディスキャン系の瞑想は積極的に取り入れています。
なおゴエンカ氏の瞑想合宿については公式サイトで詳細を確認できます。
⇒Vipassana Meditation(ゴエンカ師のヴィパッサナ瞑想)公式サイト
私のゴエンカ氏瞑想合宿体験談|人生のターニングポイント
10年以上前のことです。私は初めてゴエンカ氏の10日間瞑想合宿に参加しました。そこで驚くべき瞑想の体験をしました。そのことをまず記したいと思います。
なお元の記事はこちらの「ゴエンカ氏の瞑想合宿でトラウマ解消の体験」にあります。以下のコンテンツを元にして改めてまとめています。
合宿前に出会った若者の話
ゴエンカ氏の瞑想合宿の初日は、オリエンテーションがあります。そのとき、20代前半の男性と話す機会がありました。聞けば同じ生まれ故郷ということで親近感を憶え、話も聞いていたのですが、その内容に驚きました。
というのも「以前は自堕落な生活をしていて、薬物依存になって廃人同様だった。悪友ともつるんで荒んだ生活を送っていた。
それがゴエンカ氏の瞑想合宿に参加して劇的に変わった。今では健全な生活に戻っている。再びあの生活に戻らないよう、戒めとして合宿に参加し続けている」というのです。
それと「観察瞑想をしていると、土瓶から毒グモがワサワサと出てくるビジョンを何度も見た。それを観続けていると心が軽くなっていった」とも語っていました。
正直なところ、当時の私は内心こう思っていました。「ふーん、本当にそんなことがあるのかねえ。瞑想だけで変わるものかねえ。何か別の理由があるんじゃないの?」と。
いざ実践してみると~奇妙なビジョンが見える
そういう思いを抱きながらも10日間の瞑想合宿に参加。制約の多い厳しい合宿ではありましたが充実感がありました。
で、合宿の3日目か4日目、背中(腎臓あたり)に意識を向けると、そこに凝りがあることがわかりました。しかも、その辺りに意識を向けると奇妙なビジョンが出てくるようになります。
そのビジョンとは、狐のお面をかぶった不気味な女性の顔がぬーっと出てきて、しばらくケラケラと笑っているかのような非常に怖い映像でした。取り憑かれるのでは?と非常に怖くなりましたが、気にとめないようにします。
また紙芝居のようにパタパタと奇妙な光景が移り変わっていく映像が出てくることもありました。まるでムービーを見ているかのようなビジョンが出てくるようになったものです。
身体のある部位に意識を向けると、不気味で奇妙な映像が出てくるようになりました。
おもしろいなーと思いつつも、瞑想中に出てきたビジョンや音、音声、不思議な感覚に対しては、「そういうものだ」としてスルーするのが瞑想のお約束です。
ですので、不思議なビジョンや感覚が生じても、とらわれることなくスルーをしていました。
合宿終了後~予想を超えた浄化体験
ところが!実際に自分が10日間の合宿を終えてみると、確かに変わっていました。
合宿終了後、なんともいえない清々しさで、まるで生まれ変わったような感覚がありました。
驚いたのは、それまで何年かけても解決できなかったモヤモヤとした心や気分がきれいさっぱり解消したことです。さらに、長年引きずっていたトラウマ的なものも解消していました。
「あの若者の言っていたことは本当だったんだ!これはすごい!」と、もう感激しまくりでした。
家族も驚いた瞑想の浄化の作用
さらに驚いたのは帰宅してからです。普段一緒に生活している家族が「なんかすごく変わったね」「別人みたいだぞ!」と、私の雰囲気や印象が変わったことに驚いていたのです。
普段一緒にいる家族にもわかるほどの変化。これがゴエンカ氏の瞑想合宿の浄化パワーであり、自他ともにわかるほど「心を解放する瞑想」だったわけです。
1970年代に、ゴエンカ氏の瞑想施設が建設され、世界各地の270箇所にあり、あれから半世紀以上経っても今もなお盛んに行われているのは、自分の体験から「なるほど」と深くうなずけます。
数ある瞑想の中でも、ボディスキャンは非常に優れた瞑想であり、瞑想の効果も飛び抜けているといえます。
「何かになろう」とする方法との根本的な違い
ゴエンカ氏のボディスキャン瞑想合宿の体験を通じて、コペルニクス的な価値の転換が起きたものでした。
それまでは「自己を向上させる」ために「何かになろう」とするアプローチを20年以上続けていました。
しかし、その方法に限界を感じていました。どうしても突き抜けられない壁(自分が変わらない・変えられない所)があり、その解消、克服にどうすればよいか困惑していました。
そうした中、ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想を知り、驚くほどの瞑想効果を如実に実感。その劇的な体験によって「何かになろう」とする方法との根本的な違いがわかったものでした。
「潜在意識を書き換える」とは意識の上書き
世の中にある「自己を向上させる」方法の多くは、「何らかの理想的なイメージを設けて、それになろう」という構造をとっています。
つまり「イメージを画いて、それになりきる」というやり方です。「理想のイメージを意識に上書きをする」ともいえます。で、この手の方法は非常に多くあります。
たとえば「イメトレ(なりたいイメージを描く)」「アファメーション」「セルフトーク」「成功法則」「引き寄せの法則」「自己実現」「密教的な観想法」などなど大変多くの方法があります。
一言でいって「自己暗示」「潜在意識を書き換える方法」といえるでしょう。
これらの方法にももちろん良い点はあります。
即効性があり、嫌な気分や心をすぐに切り替えることがしやすい。「やった感」「達成感」が得られやすい。わかりやすく、誰でもできる。そういうメリッはあります。
「自己暗示」は心を解放しない
けれども20年以上続けてわかったのは、この手の自己暗示系の方法には、知られざる「欠陥」があるということなんですね。「限界」ともいっていいでしょう。
それは、どこまでいっても「心の解放」を引き起こさないということなんですね。
この手の方法は、要するに、心の上に「別の観念(イメージ)を上書きして整えるだけ」なんですね。上塗りしてお化粧をしているだけ。
なので心の奥にある諸々は解放されることなく、むしろ表面的な認知が変わることとの対比構造から、かえって意識の億にはモヤモヤが積み重なり残り続けるようになります。
潜在意識は書き換えられない
もちろん、この手の方法にも言い分があります。長期にわたってアファメーションを行い、なりたい理想の自分をイメージし、言葉で言い続けていれば、潜在意識から大きく変わるというロジックです。
これは自己暗示系を成立させているキモのロジックです。しかも一見すると、ごもっともなんですね。
ところが、20年以上続けた私の所感としては、認知の表面的な部分は変わる、良くなる。しかし、どうしても心の奥にモヤモヤとしたのが残ってしまう。
いや、アファメーションやイメトレといった自己暗示系、潜在意識を書き換えるといった方法をすればするほど、心の奥に何かが抑圧されていく感じも受ける。
これが微妙なモヤモヤを生みだし続け、しかも「悪循環」に陥っているのではないかと。
結局、「表面的な認知は変わるが、潜在意識(意識の深い領域)は変わらない」ということが体験的にわかってきたものでした。
しかし当時は、抜本的な解決策がわからないままだったものです。
ボディスキャンは潜在意識から解放を引き起こす
ところがゴエンカ氏のボディスキャン瞑想は「何もしない」系の実践です。何かになろうとするのではありません。
ただ意識を身体の各部位に向ける(気づく)ことによって、自然な心の解放が起きて、天然自然の有り様に立ち戻っていく。
根本的にアプローチが異なるわけですが、この根本的な違いが、圧倒的な心のの解放(浄化作用)の差を生み出しているんですね。
あるがまま系は説明だけでは理解しにくい
このことは「実際に体験しないと理解しにくい」ところがあります。説明だけを聞いても「えーそうなの?」と疑問に思いやすい。
それだけ、ロジックでは説明しにくいアプローチなんですね。
しかしアファメーションやイメトレでは決して達成できない領域に、「あるがまま」「何もしない」系の瞑想は導いていきます。
ボディスキャンは、まさに「あるがまま」「何もしない」系の瞑想に位置づけられます。
この強烈な瞑想体験がきっかけで、テーラワーダ仏教への関心が高まり、やがてテーラワーダの比丘を招く瞑想会を始めます。
こちらのブログ「気付きの瞑想・マインドフルネス・あるがまま【浜松市】」は、その記録になります。
このような瞑想会は10年以上、開催しましたが、すべてのはじまりはゴエンカ氏の瞑想合宿にありました。
ボディスキャン瞑想のやり方
ボディスキャン瞑想のやり方を、くわしくご説明いたします。
基本的な流れ
ゴエンカ氏の瞑想に代表されるボディスキャン瞑想の基本的な流れは次の通りです。
- 姿勢を整える
座った姿勢(または仰向け)でリラックスします。目を閉じ、全身の力をゆっくりと抜きます。 - 頭頂から足先へ——意識を巡らせる(下行)
頭頂→顔→首→肩→腕→手→胸→お腹→背中→腰→脚→足先と、身体の各部位にやわらかく意識を向けます。各部位にある感覚(温かさ・重さ・緊張・しびれ・何も感じないなど)にただ気づきます。 - 足先から頭頂へ——逆方向に戻る(上行)
足先まで到達したら、今度は足先→脚→腰→背中→お腹→胸→腕→肩→首→顔→頭頂と、逆方向に戻っていきます。 - 往復を繰り返す
この頭頂から足先、足先から頭頂への往復を繰り返します。これが1往復です。
最も重要なポイントは「感覚を変えようとしないこと」です。「そのまま」にして見守ります。
緊張している部位があっても、ほぐそうとしない。痛みがあっても、消そうとしない。ただ「そこにある感覚」に気づく(見守る)だけでOKです。
各部位での意識の向け方
ちなみに、各部位に意識を向けるとき、「じっくり感じよう」と力む必要はありません。といいますか、力んで「感じよう」「見よう」「気づこう」とすると、瞑想がズレていきます。
その部位に意識が向いている、という状態が数秒続けば、次の部位に進んでOKです。感覚が何も感じられない部位があっても問題ありません。「何も感じない」という感覚自体が、その部位の観察結果です。
内臓(肝臓・胃・腸など)に意識を向けることも有効です。「軟酥の法」や「ゆるっと瞑想会の内臓観察瞑想」と同じ原理であり、深い浄化作用が得られます。
軟酥の法(なんそのほう)とは|白隠禅師の内観瞑想・やり方・効果・コツをわかりやすく解説
ボディスキャン瞑想の効果
私の経験上、ボディスキャンは秀逸な瞑想の一つであると実感しています。それは効果が顕著だからですね。
ここではボディスキャンの効果と、そのメカニズムについて、これまら体験に基づいてご説明したいと思います。
心身の浄化——テーラワーダで群を抜く効果
私の実感として、テーラワーダ系の瞑想の中でボディスキャン(ゴエンカ氏の瞑想)は浄化作用において群を抜いています。
冒頭の体験談の通り、長年解決できなかったモヤモヤ・トラウマ的なものが一度の合宿で解消された体験は、私にとって何十年経っても忘れられない出来事です。体験上、ボディスキャン瞑想の効果は、
- 潜在意識にある心までもが解放されていく
- 思考・感情のとらわれが自然にゆるんでいく
- 長年の心のモヤモヤ・緊張が解消されやすい
- 自律神経が整い、身体の緊張がほぐれる
- 身体感覚への気づきが高まる
- 自然な受容力・慈悲心が育まれやすくなる
このような効果があることを実感しています。
「何かになろう」とするアプローチが心に観念を上塗りするのに対し、ボディスキャン瞑想は心の奥に積み重なったものを自然に解放していきます。
この根本的な違いは、瞑想を続ければ続けるほど大きく実感されるようになります。
なぜボディスキャンは浄化作用が大きいのか
ボディスキャン瞑想が強い浄化作用をもたらす理由を、私自身の体験に基づく理解でお伝えします。
感情・ストレス・トラウマは、身体の感覚として蓄積されています。怒りは胸の緊張として、不安は胃の収縮として、悲しみは喉の詰まりとして、私たちの感情は必ず身体に反映されています。
ボディスキャンで身体の各部位に意識を向けることは、こうした蓄積されたエネルギーに直接アクセスすることになります。「ただ観察する」という行為が、蓄積されたものを自然に解放していくんですね。
自らの体験で「こだわり」の仕組みを解き明かす
ゴエンカ氏の瞑想合宿に参加したとき、冒頭に書いた通りで、身体のある部位に意識を向けると、奇妙な映像が出てくることがありました。
この映像は、身体に刻まれた筋肉の緊張(凝り)と記憶が連動しているのではないかと直感したものです。つまり「こだわり」「トラウマ的な感情」が凝り・映像・声となって表れるという直感です。
私は合宿中に、筋肉の緊張(凝り)と記憶がこだわり・トラウマ的な感情を形成していることを直感しました。
実際に瞑想合宿が終わった後、それまでこだわっていた感情やトラウマ的なものが解放され、この体験から直感が正しいと確信しました。
精神科医が同じ説明をしていた
その後、何年か前に、精神科医のヴィルヘルム・ライヒや、トラウマやPTSD研究の世界的権威の精神科医ベッセル・ヴァン・デア・コークらが、筋肉の緊張と感情、記憶が連動してトラウマやPTSDを生み出すことを述べているのを知りました。
私が直感したことと同じ見解を述べていたことを専門家が言っていることを知り、「やはり正しかったんだ!」と、大変、納得すると同時に、自信を得たものでした。
心が解放されるメカニズムをさらに追求
さらにいえば、身体部位に意識を向けるだけで、なぜ筋肉、感情、記憶の絡みがゆるむかといえば、そこに「気・エネルギーが発生するからだ」と、これまた直感。
後に、気功の世界へ行くと、気功には、意識を向けた場所に気(生命エネルギー)が流れ、滞りが解消されるという「意到気到」という概念があることを知り、これまた納得したものです。
ボディスキャン瞑想は「意念導引」と同じ原理が組み込まれたヴィパッサナー瞑想であることがわかったものでした。
ボディスキャン瞑想は「気功」である|意到気到という視点
ゴエンカ氏の「ボディスキャン瞑想」は、気功(きこう)の原理に基づいています。一見異なる実践のように見えますが、気功を内包しているともいえます。
気功の視点からボディスキャンを理解すると、なぜ続けるほどに心身が変わるのか、その仕組みがより鮮明に見えてきます。
気功とは何か
気功とは、中国で4000年以上前から伝わる心身の修練法です。「気」は生命エネルギー、「功」はその活性化のためのトレーニングを意味しています。
気功は大きく「外気功」と「内気功」に分かれますが、ボディスキャン瞑想は内気功(ないきこう)・静功(せいこう)に分類されます。体をほとんど動かさず、意識を使って内側から気を整えていく実践です。
「意到気到(いとうきとう)」~意識の向いた場所に気は流れる
気功の核心原理が「意到気到(いとうきとう)」といわれています。
「意到」とは意識・心が向くこと、「気到」とは気(エネルギー)が集まることをいいます。すなわち「意識を向けた場所に、気(生命エネルギー)が集まり流れる」という原理。
この原理こそが、ボディスキャン瞑想の本質を気功の言葉で説明するものだと思っています。頭頂から足先へ、足先から頭頂へと意識を巡らせていくことは、まさに「意識を向けたところに気が集まり、気が通ることで、滞りがゆるんでいく」ことになります。
感情・ストレス・トラウマは身体の感覚として蓄積されています。筋肉の凝りと感情と記憶がセットになって絡んでいるのが「こだわり・トラウマ的な感情」。
ボディスキャンで各部位に意識を向けることで、気・エネルギーが発動するようになり、その結果、筋肉の凝り・感情・記憶のセットを自然に解放していくようになるのでしょう。
これがボディスキャン瞑想の知られざる「心の解放メカニズム」であると思っています。
往復することで気の循環が促される
ボディスキャンで頭頂から足先へと意識を巡らせていく動作は、上ってしまった気を足下・丹田(へそ下のエネルギー源)へと引き戻す気功的な操作にもなっています。
また頭頂から足先へ、さらに足先から頭頂へと往復するのは、気功的にいっても理にかなっています。
往復することで全身の気が循環しやすくなります。この往復の繰り返しが、ボディスキャンの強い浄化作用の一因にもなっていると思います。
ボディスキャン・軟酥の法・気功の共通原理
ゴエンカ氏の「ボディスキャン瞑想」と白隠禅師の「軟酥の法」、気功の三つの実践は、一見異なる実践のように見えますが、深く関連しています。三つの実践を気功の観点から整理すると次のようになります。
| 実践 | 意念の使い方 | 気の方向 |
|---|---|---|
| ボディスキャン瞑想 | 意識を巡らせる(イメージなし) | 頭から足へ・足から頭へ(往復・全身循環) |
| 軟酥の法 | イメージ(溶けるクリーム)+意識を巡らせる | 頭から足へ(気を下ろす) |
| 気功(内気功・静功) | 意念で気を導引する | 状況に応じて丹田へ集める |
いずれも「意識(意念)を身体の各部位に向けることで、気(生命エネルギー)の滞りを解消し、循環を促す」という同じ原理に基づいています。
ボディスキャンが「観察瞑想」であると同時に「気功的実践」でもある——この二重の意味を知ることで、実践がより深まります。
ボディスキャン瞑想の3つのコツ
ボディスキャン瞑想には3つのコツがあります。以下は、私の経験上からも言える3つのコツをお話しいたします。
①感覚を変えようとしない・評価しない
最大のコツは、「良い感覚を作ろうとしない・悪い感覚を消そうとしない」ことです。
緊張・痛み・しびれ・不快感——こうした感覚が出てきたとき、「早く消えてほしい」「なくそう」とすると、それ自体が「操作」になり、観察から外れてしまいます。ただ「そこにある」と気づくだけで十分です。
不快な感覚が出てきたときほど、「あ、これが浄化のプロセスだ」と理解して、観察し続けることが大切ですね。
合宿中の若者が「毒グモのビジョンを観続けていると心が軽くなった」と語っていたように、不快なものも観察し続けることで自然に解放されていきます。
②力まず、やわらかく意識を向ける
「しっかり感じよう」「はっきり観察しよう」と力んだり集中するのは逆効果です。やわらかく、なんとなく意識がそこに向いているという感覚で十分です。
強く集中しようとすると、意識が過緊張になりボディスキャンの効果が下がります。ゆるやかに、流れるように意識を巡らせることが大切になります。
③複雑に考えない人ほど効果が出やすい
私の観察では、複雑に考えることが少ないシンプルな人や、観念的な思考パターンが少ない人ほどボディスキャンの効果が著しくなる傾向があります。
つまり「マインド的でない人」のほうが効果を実感しやすいということですね。
「何かになろう」とするアプローチを長く続けてきた人は、頭の中に観念や思想の層が積み重なっているため、ボディスキャンの効果が出るまでに時間がかかることがあります。
けれども、そうであっても続けることで、少しずつ解放が起きていきます。
ボディスキャン瞑想の時間——何分がよいか
20分以下では効果が得られにくい
ボディスキャン瞑想は時間が長いほど効果が高まる実践です。
率直にいえば、20分以上のボディスキャンを推奨しています。5分・10分は、ボディスキャンの要領や効果がわかってきた中級者向けになると思います。
初めての人の場合、5分・10分は「少しリラックスした」という感覚はあるかもしれませんが、深い浄化作用は起きにくいです。初めての人の場合は、最低、20分以上がおすすめになります。
目安としては次の通りです。
- 5分・・・少しリラックスした感覚。
- 10分・・・うまくできればリラックス感が出てきます。
- 20分・・・望ましい最低ラインの目安。効果を実感し始めるのはこのあたりから。
- 45分・・・深い浄化作用が起きやすくなる時間。ゴエンカ氏の合宿でも1セッション45分〜1時間が基本です。
- 1時間以上・・・最もおすすめ。継続することで、心身への影響が大きく変わってきます。
ゆるっと瞑想会でも、ボディスキャン(内臓観察瞑想)を行っています。長時間行うほど「ヒーリングを受けているかのよう」という体験が起きやすくなります。
最初は20分から始めて少しずつ伸ばす
最初から1時間を目指す必要はありません。まずは20分から始め、慣れてきたら30分・45分・1時間と少しずつ伸ばしていくことをおすすめします。
週に数回でも、20〜45分のボディスキャンを継続することで、着実に効果が積み重なっていきます。
ボディスキャン瞑想を寝ながら行う・寝る前に行う|ヨガニドラー
ボディスキャン瞑想を寝ながら行うこともできます。ヨーガでは「ヨガニドラー(ヨーガニードラ)」とも言われ、「眠りのヨガ」と呼ばれています。
「ヨガニドラー(ヨーガニードラ)」は、仰向けで横たわり、音声ガイドに従って意識を体の各部位や呼吸へ向けていくリラクゼーション法です。
まさにテーラワーダ仏教のボディスキャン瞑想(ヴィパッサナー瞑想)と同じなんですね。
寝ながら行うのもOK
ボディスキャン瞑想は仰向けに寝ながら行うことができます。仰向けは全身の力が抜けやすく、リラックスしやすいため、ボディスキャンとの相性は非常にいいんですね。
腰が悪い方・長時間座ることが難しい方には特におすすめです。
寝落ちしてしまっても問題ない~朝に再実践を
寝る前にボディスキャンを行って、そのまま眠ってしまってもOKです。心身が深くリラックスした結果として眠りに入ることは自然なことだからですね。
ただし深い浄化作用を目的とする場合は、眠ってしまうのはもったいないですね。その場合は次の工夫をおすすめします。
- 寝落ちした場合は、翌朝に改めてボディスキャンを行う
- または就寝の1〜2時間前に座った姿勢でボディスキャンを行い、その後就寝する
寝ながら・横になって行う瞑想|仰向けでできるやり方・効果・おすすめの実践を解説
ボディスキャン瞑想と軟酥の法|原理は同じ
ゴエンカ式のボディスキャン瞑想と江戸時代の白隠禅師が伝えた軟酥の法(なんそのほう)は、本質的に同じ原理に基づいています。
ボディスキャン瞑想と軟酥の法の違い
最も大きな違いはイメージを使うかどうかです。
ボディスキャン瞑想
ボディスキャン瞑想はイメージを一切使いません。各部位の感覚にシンプルに気づくだけの実践です。「気づき(意識を向ける)」だけで行います。
こちらのほうがより気功的です。またほかの「あるがまま」「観察」系の瞑想もできるようになります。応用が効きます。
軟酥の法
一方、軟酥の法は「頭上に置いた軟酥(バターのようなもの)が体温でゆっくりと溶け、頭→肩→胸→腸→足へと流れ落ちていく」というイメージを活用します。
イメージを描くことができれば、初心者でも誰でもできるやり方になります。イメージがアシストをして、ヒーリング効果を感じやすくなるメリットもあります。
ただしイメージを使うと、厳密にいえばエレメンタルという思念物質を形成し、これが高次意識への自覚を阻むことが起き得ます。
どちらがおすすめか?
長い目でみれば、ボディスキャン瞑想のやり方のほうがおすすめになります。しかし、即行的な効果を期待したい場合は、軟酥の法でもよいかと思います。
原始仏典の三十二身分——共通の源流
ボディスキャンと軟酥の法には共通の源流があります。原始仏典に伝わる「三十二身分(さんじゅうにしんぶん)」の観察瞑想です。
三十二身分とは、頭の毛・体の毛・爪・歯・皮膚・肉・筋・骨など、身体を三十二の部位に分けて観察していく実践です。
ゴエンカ氏のボディスキャンはこの実践を現代化したもの、軟酥の法はイメージを加えた日本版と考えることができます。
三十二身分の観察瞑想→軟酥の法(イメージを加えた日本版)・ゴエンカ式ボディスキャン(現代版)——本質的に同じ瞑想法の異なる表現になると思います。
ゆるっと瞑想会での三つの実践
ゆるっと瞑想会では、この原理に基づいた三つのやり方をお伝えしています。
- 観察瞑想としてのやり方
イメージを用いず、各部位にただ意識を向けていくシンプルな方法。ゴエンカ氏のボディスキャンに近いやり方です。 - 感謝・慈悲・ありがとうの念を贈るやり方
各臓器・各部位に対して慈しみや感謝の念を向けながら行う方法。心と身体の両方に働きかけます。 - 軟酥の法的なやり方(イメージを使うやり方)
白隠禅師の軟酥の法に近い、イメージを活用した観想法です。
瞑想会では内臓観察瞑想を長時間、行うことがあります。「ヒーリングを受けているかのよう」という感想もあるほどパワフルな実践になっています。
軟酥の法について詳しくはこちらをご覧ください。
軟酥の法(なんそのほう)とは|白隠禅師の内観瞑想・やり方・効果・コツをわかりやすく解説
ボディスキャン瞑想のアプリ
ボディスキャン瞑想を自分でガイドなしに行うのが難しい場合、アプリの誘導音声(ガイド)を活用するのも役立ちます。
Insight Timer(インサイトタイマー)
Insight Timerは世界最大の瞑想アプリの一つですね。ボディスキャン瞑想(ヨガニードラ)のガイド音声が収録されています。

「Insight Timer」を開いて、「ライブラリ」を選択し、「ヨガニードラ」を選択します。
すると、「ヨガニドラ」と出てきます。これを利用すると、音声ガイド付きの「ボディスキャン瞑想」ができるようになります。
Insight Timerは無料で利用できるコンテンツが豊富です。日本語のガイド音声も含まれています。タイマー機能も充実しているんですね。ベルの音で瞑想の終わりを知らせる設定もできます。
AndroidはGoogle Playストア、iPhoneはApp Storeで「Insight Timer」と検索してダウンロードできます。
Android(Google Play)
iPhone(App Store)
Awarefy(アウェアファイ)
Awarefyは、認知行動療法のスキルに基づくAIメンタルパートナー・自己理解&セルフケアアプリです。AI型のメンタルアプリですね。
この中に、ボディワーク瞑想の音声ガイドがあります。
AndroidはGoogle Playストア、iPhoneはApp Storeで「Awarefy」と検索してダウンロードできます。
Android(Google Play)
iPhone(App Store)
アプリはあくまで補助として
アプリの誘導音声は入門期の助けとして有効ですが、音声に頼りすぎると「ガイドなしでは実践できない」状態になりやすいという面があります。
慣れてきたら、自分でボディスキャンを行う実践に移行していくことをおすすめします。
ゴエンカ氏の瞑想合宿について
ボディスキャン瞑想をより深く体験したい方には、ゴエンカ氏の10日間瞑想合宿への参加をぜひ検討してみてください。
10日間の合宿は、参加のハードルが少し高いと感じる方もいるかもしれません。確かに制約のある厳しい合宿になります。
ですが、心の浄化作用は桁違いに大きいんですね。冒頭でお伝えした通り、私の場合は長年解決できなかった問題が一度の合宿で解消されました。
ただし無理は禁物です。参加の敷居が高いと感じて、抵抗感を憶える場合は、無理に参加するのは止めておいたほうがいいと思います。
合宿は京都と千葉で定期的に開催されています。参加費は無料(任意の寄付)です。運営もボランティアで行われています。
⇒Vipassana Meditation(ゴエンカ師のヴィパッサナ瞑想)公式サイト
ゴエンカ氏の瞑想は、私の人生のターニングポイントの一つでした。心の浄化という観点から、これほどパワフルな実践を私は他に知りません。
合宿への参加が難しい場合でも、日常でのボディスキャン実践を積み重ねることで、確実に変化を感じることができると思います。
まとめ|ボディスキャン瞑想を日常に取り入れる
ボディスキャン瞑想は、シンプルながら非常に深い実践です。
やり方——頭頂から足先へ、足先から頭頂へと往復しながら、各部位の感覚にただ気づく。
コツ——感覚を変えようとしない。やわらかく意識を向ける。不快な感覚も観察し続ける。
時間——20分以上がおすすめ。45分〜1時間以上できるのは望ましい。継続が大切。
寝ながら——仰向けでも大丈夫・ヨーガニードラと同じ。寝落ちした場合は翌朝に再実践を。
「何かになろう」とする方法ではなく、「天然自然の有り様に立ち戻る」というのが、ボディスキャン瞑想の本質です。
焦らず、毎日少しずつ続けていくことで、心身の変化を感じてることができると思います。
